時は、漢に似たる架空の王朝。
ひと夜、静かに交わされた「字」が、ふたりの命運を結び、また引き裂いてゆく――
四親王・犀星と、豪族の嫡子・玲陽。
幼き日に名を贈り合い、心を寄せて育ったふたりは、やがて政の波に呑まれ、想いを胸に、別たれてゆく。
祟りに揺れる山里、陰謀渦巻く宮廷、人の情と神の理が交わる時代にて、ふたりは幾たびも心を呼び合う。
――君は、まだわたしの名を憶えているか。
――あの日、君の目に映った光は、今も同じか。
絆とは何か。
信じるとは、愛するとは、いかなることか。
ひとつの「名」に込められた願いが、やがて世界を、運命を、静かに変えてゆく。
新月の夜に始まる、ひそやかなる魂の物語。
読んだあと、きっと“光”を信じたくなる。
心を揺さぶる本格派歴史ファンタジー、開幕。
文字数 72,220
最終更新日 2025.4.25
登録日 2023.6.8