小説書こうよ!BL小説の書き方
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プロットはお話の設計図です

ブレストを元にプロットを書いてみる

  •  一人ブレストが終わったら、実際にテキストエディタでもワードでも、メール画面でもノートに直書きでもいいので、【テーマ】【キャラクター】【大筋】と書いてみましょう!
     そして出したアイディアを元に、この三つを埋めていくのだ! 埋めろい埋めろい、埋めて埋めて埋め尽くしてやるのだ――。
     まあ大体そんな感じですね。(雑にまとめよった)
  •  実際に私が雲母のプロットを書くとしたらこんな感じです。
  • 【テーマ】
     ・努力は実ると信じているのに常に報われない主人公が、実るという結果よりも、努力できた自分を認めてあげられるようになる。(心のテーマ)
     ・料理系リアリティショーに出演し、頑張って準優勝となる。その過程で恋人ができる。(出来事のテーマ)

    【キャラクター】
     受け・渡瀬雲母(わたせきらら) 二十歳・黒髪黒眼、地味だけどよく見ると整っている顔・中背・大学生
     奔放な母親のせいでお金に苦労している苦学生。意地っ張りで自分の弱さをさらけ出せず、いつか努力は実ると信じて踏ん張っているものの、生まれながらの不運続きで時々心が折れそうになる。そのため、自分はだめなんだという劣等感が強い。内心では誰かに甘えたいが、素直になれない。地味な見た目なのに名前だけきらめいているため、本人はそこにも引け目を感じている。負けず嫌い。

     攻め・糸尾要(いとおかなめ) 二十歳・茶髪茶眼・イケメン高身長、実家が金持ち・大学生
     なにもかも持っている大学生。なんでもあるがゆえの生きる目標もなく、日々ぼんやりと生きており、周りの人からも好意を寄せられることしかなかったため、雲母から突然ライバル視されて戸惑う。内面は流されやすく、繊細で気にしいだが、感情表現は不得手。根は善良だが、やられたらやり返すタイプ。子どものころ、天才ちびっ子料理人としてテレビに出ていた時期がある。番組に出たのは親の古なじみであるプロデューサーから頼まれたからなんとなく、だった。

     高沢京(たかざわみやこ) 二十九歳・イケメン高身長
     若き天才シェフと言われるチャラ男。パリの有名シェフの弟子だったが客に手を出してトラブルになり、破門になった……という嘘か真か分からない噂が流れている。ノリは軽いが洞察力に優れ、意見は的確。人を見る目もあり、料理には真摯。主人公の熱意と不器用さを気に入る。リアリティショーの審査員。気に入ったからといって料理には真剣なので、審査で色はつけない。主人公に対しては常にからかい気味にからんできて、時折ぐさっとくることを言う。

     【大筋】
     一章、リアリティショーに出演するきっかけ
     苦学生の渡瀬雲母は世間の冷たい風にも負けず、「今に見ていろ」の精神でアルバイトに励み、自分の学費を稼ぎ、大学を出たら給料のいい仕事について、中学生の弟の学費を払ってやるのが目標だった。
     しかし半年かけてため込んだ学費を、悪気はないが後先考えない母親のせいで失う。(母がロマンス詐欺に遭うなど)怒りは湧くが母を憎みきれない雲母は、来年受験の弟のこともあり、たまたま見かけた料理系リアリティショーの番組に、優勝賞金を目当てに応募。(※この前に、貧乏なためどんな食材からでも美味しい料理を作れるという伏線、だから雲母は料理に自信あり、という前提を日常描写で張っておく)
     雲母は絶対に優勝すると意気込んで、番組に参加。

     二章、リアリティショーの参加者&攻めとの初対面
     参加者として選ばれたのは十人で、二十日間(※雲母は春休みで、収録後に学費を振り込ませてほしいと大学と交渉しているので崖っぷち)の収録期間中、全員シェアハウスに住むことに。視聴者投票もあるため、シェアハウスでの生活もカメラに撮られる。(※最低限のギャラなどの説明を入れる)
     参加者十人の顔合わせと、審査員やスタッフの紹介。(※書く前にキャラを決める)
     そこで紹介された一人、糸尾要が、かつてテレビに「天才ちびっ子料理人」として出ていたと知る。周りの参加者から、「どうせやらせだよ。最後は糸尾を勝たせるつもりだって」「あの顔見たら絶対そうだろ」(イケメンだから芸能人としてデビューさせるための前座としてこの番組に出ている、みたいな内容)を聞かされる。雲母は要に対してうっすらと反発をいだくが、審査員の京が「やらせは一切なし。おれの沽券に関わるから、本気で審査するよ」という一言を信じることにする。
     要と寝室が一緒になってしまう。二十日間顔を合わせるかもしれないので、内心反発があっても、穏便に接そうと思っていた雲母だが、要に参加理由を問われたことをきっかけに、二人だけで会話。要は自分がほしいのに持てないものすべてを持っていると分かる。さらに、「プロデューサーに頼まれたから出た。一回戦めでわざと負けるつもりだけど、たぶん負けさせてもらえないだろうな」という一言に腹が立ち、ついキレてしまう。突然キレられた要も、雲母の態度が理不尽だと思って腹を立て、二人は言い争う。
     絶対にお前にだけは負けない、と啖呵を切る雲母。要は負けるつもりで参加していたが、逆に雲母には負けたくない、と思うように。(※子ども同士の喧嘩という感じ)

  •  ……以下、こんな感じで出来事+詳細+注意書き(※部分)+主人公の感情がどんな状態でどんなふうに変わるか、を書いていきます。
     正直、「雲母は母親をどう思っているか」とか「要は恵まれてはいるが悩みはないのか」など、深掘りが必要なことがいくつも置き去りにされているのですが、そのへんはおいおい、書きながら表現しても構いません。ただ、第三者に「そこのところどうなの?」と聞かれたら、「たぶんこう」と答えられるよう準備はしておくのがベストだと思います。
     ベスト、つっといてこれがめちゃくちゃ難しいんだけども。
  •  プロットには、大筋をきちんとした文章にせず、どのタイミングでなにを書くかメモをしていくやり方もあります。それがこちら。
  •  三章、他の参加者との関係性&最初の収録
     雲母が他九人のメンバーからどう扱われるか、雲母がどう接するか、要がどうかを書く。(キャラだて)収録の様子を書く。視聴者に雲母と要がどうアピールするか書く。それぞれの違いを出す。雲母の感情→ますます闘志を燃やすが、要が自分よりも明らかに「ウケている」ことを感じて悔しい&劣等感に見舞われる。(※この章で京の性格に雲母が触れるエピソード、京が雲母を気に入る流れか伏線がほしい)

     四章、次の収録までの準備期間どう過ごすか&家族との関係や、雲母の抱える葛藤&要の恵まれ具合
     自由時間中家族と連絡をとり、弟が不安がっていることで落ち込みつつも、弟の前では明るく振る舞う雲母。(※雲母の思いやりあるところを描写)他参加者と仲良くしている要、また過保護で金持ちの親が高級車でシェアハウスに立ち寄り、高価な差し入れをしていく姿などを見て、さらに要への劣等感を強める。(※このへんで、要が雲母の繊細なところや、傷心に気づくエピソードがほしい)

  •  私自身はこちらの簡単なメモ書きパターンでプロットを作ることが多いです。
     また、この程度の「なにが起きるか、なにを書くか」をメモしていくタイプのプロットの場合、ブレストから一時間以内にすべて書く、を目安にしています。
     実際そのくらいの時間で書けるということは、自分の中であらかた考えがまとまっているからだと思うので、一時間以内に書けなかった場合はもう一度ブレストをしてみたり、一旦寝かせてみるなどしております。
  •  さて、私の場合、具体的なエピソードは書きながら考えていくことがほとんどなので、プロット段階でのメモ、(※この章で京の性格に雲母が触れるエピソード、京が雲母を気に入る流れか伏線がほしい)については考えずに進めることが多いのですが、もし初めてプロットから小説を作るとか、編集さんまたは他人にプロットを見てもらう場合は、なるべく具体的にどういうエピソードにするか考えてから出したほうがいいと思います。
  •  そうすると、「こういう出来事があっても、京は雲母を気に入らないんじゃないかな?」などのアドバイスがもらえて、「じゃあどういう経緯なら気に入りますかね?」と相談もできます。 プロットから一緒に編集さんと小説を作る機会に恵まれたかたは、是非そんなやりとりをして、お話の魅力を高めていってください。

キャラクター作りはプロットにも通ず

  •  京が実際にどんなことがあれば雲母を気に入るか、については、プロット作成中に浮上してきた問題ですが、本質的には前回コラムで取り上げた「キャラクター作り」が鍵です。
     なので、京というキャラがどういう人か、なにを大事にしているか、雲母がどんな人間かを合わせて考えることで、エピソードが生まれてくると思います。
  •  たとえば、負けず嫌いの雲母が、収録が終わったあとも一人で反省会をしていて、キッチンを借りて、既に終わったお題(用意された食材)でもう一度作り直しているところを見て、料理にだけは真摯な京が、「真面目だねえ」とからかいながらも、好感を抱く……とか。そこで一人練習を見られていた雲母が恥ずかしがったり、からかわれてむかついたりしつつも、京に「味見させて」と言われて料理を振る舞い、ちゃんとしたアドバイスをもらえて京を見直す……とか。さらに、「審査は本当にやらせじゃないんだよな?」と確認する流れも追加できるといいかもしれません。「俺は料理に対しては嘘をつかない」と京が言い切り、雲母が信じる……とか。
  •  このようなエピソードが入ることで、雲母の性格(努力を惜しまないところ、真っ直ぐなところ、相手が真摯であれば信じるところ、裏で努力しているのをかっこ悪く思ってしまうところ……などなど)が描写できますし、京がどんなものを好ましく思い、好ましく思ったものに対してどう接するのか、ということも描けます。
  •  そうしてこのエピソードを通して、雲母と京というキャラの関係変化を描くことができます。京は脇キャラなので、一度変化した関係性は、基本的にはそのままであることが多い、というのも頭の隅っこに入れておくと便利かなと思います。(もちろん程度の問題で、関係性が二転三転する話運びもありますが)
  •  (※このへんで、要が雲母の繊細なところや、傷心に気づくエピソードがほしい)というメモについても、雲母と京の関係性変化を描いた前述のエピソードと、意図は同じです。
     この四章までの雲母と要の関係性は、初対面の印象最悪、お互い相手には負けたくないしいけ好かないと感じているもの。その関係性を四章あたりで変えたいというリクエストです。

設計図を使って構成を考える

  •  BLですから、受けは最後攻めと結ばれるのが相場です。もちろん違う場合もありますが、よほどのことがない限りは、雲母は要と恋人になりますよね。
     最初が反発関係で、最後が恋人関係なら、当然どこかの過程で互いに理解しあったり、相手を好きになる気持ちの変化が生じるはず。
     プロットというよりは構成の話になりますが、
  •  一章は主人公の状況、話の大筋に関わる出来事の中にどうやって身を投じていくか、また基本的な主人公の性格の提示。
  •  二章は攻めの基本的な情報と、対主人公とどういう関係か、そして主人公の周りの環境はどうか。
  •  そして三章では、攻めとの間で生じた感情や関係を、さらに深く描写しています。
  •  とりあえず二人は仲が悪いよ! と二章で提示したので、三章では、ほ~らこんなにも仲が悪いし、仲が悪い理由はこうだから仕方ないよねえ、と具体的エピソードで読者に見せていくわけです。
  •  三章で二人の仲が悪いことは十分見せたのですから、四章では次のフェーズに入らないと展開がたるみます。
  •  そこで、(※このへんで、要が雲母の繊細なところや、傷心に気づくエピソードがほしい)という注文が入ってくるのです。
     BL小説は、関係性の連続と変化を書いていく作業です。
  •  Aという関係性です。Aという関係性なので二人はこんなふうに接します。Aという関係性でしたがBという関係性に変わりました。Bという関係性なのでこんなふうに……。
  •  この連続を描写していくんですね。
     変化するのは受け攻め両方でもいいし、片方のみでもいいのですが、雲母と要の場合、二人の性格や置かれた状況を鑑みるに、四章で変化するのは要でしょう。
  •  要は人生に余裕があって、べつにこの番組で優勝したいわけではない。
     雲母があんまり噛みついてきたからむかついて(※このむかついた理由にも、昔テレビに出ていた過去を絡められると要のキャラがたちますね)反発してしまったけれど、時間が経ってくると張り合ってるのも馬鹿らしくなってくるのでは、と思います。
  •  雲母が弟に心配をかけていること、自分の至らなさに落ち込んでいるとして、その落ち込みに気づいてしまい、雲母の気が強いだけではない違う一面を見てしまうとか。
  •  とにかく、そよ風が吹いたくらいのインパクトでもいいので、二人の関係が変わろうとしている、というのを読者に見せたいタイミングです。
  •  で! 本文を書くときに大事なことは、攻めが先に変化するのだとしても、書くときにはここを攻め視点にしないようにしてください。あくまで主人公雲母の視点から、要の変化を書く。プロットとは関係ないのですが、大事なことなので言っておくぜ。
  •  雲母のような境遇、性格だと、おそらく六章めに大きな変化がくるでしょう。
     なぜそう予想するかって?
     まずこのお話は、舞台を「料理系リアリティショー」に設定しました。そしてこのリアリティショーの勝負は、全五回。(ブレストのノートに書いています。)
  •  三章で一回目の勝負、四章で合間に挟まれる日常回を書いたので、残り四回の勝負についてはある程度省略して書いてもいいのです。基本的にはこんな感じで収録が進むし、合間はみんなこんなふうに過ごしているよ、という読者へのお知らせが終わったからです。(このへん、本文を書くときにぜひ気にしてほしいところなので、次回あたりにお話ができるといいなあ)
  •  お話の見せ方として、残り四回勝負のうち大切なのは後ろ二回の準決勝と決勝です。
     なので、できれば準決勝の前に雲母に大きな変化を与えておきたい。すると、二回目の勝負回は省略し、五章で準々決勝の前後を書くことになります。
  •  準決勝の前になにか起きるとしたら準々決勝のあとが望ましいでしょう。
     その事件を受けた雲母が、四回目の勝負を前にして大きく動揺している(=己の葛藤に負けそうになっている)状態こそ、お話として面白い作りだと思います。これはプロットというより、構成的な考えです。
  •  努力は実るという信条でやってきた雲母が、いいや実らないんだと思うような……雲母の抱える葛藤に負けてしまいそうな事件が起きる。
     そのとき颯爽と雲母の前に現れ、お前の考えは間違っていないと励まし、気持ちを切り変えさせてくれるのが、当然我らが攻め、要です。
  •  ここでメイン脇役とか、家族とか、持ってきちゃあ駄目ですよ。いつだってBL小説で、ここ一番のときに現れるのは攻めなのです。まあ群像小説でしたら例外もありますが、初めから群像小説を書くのは難しいので、まずは一旦攻め様にヒーローの座を譲りましょう。
     そうして要の励ましで準決勝を乗り越えられたら、雲母の要を見る眼は変わりますよね?
  •  気持ちは大きく変化します。その変化した気持ちを整理して、あるいは整理できないままに、決勝戦になだれこみ……迎えた要との真剣勝負。(やっぱりBLなので、最後は攻めと一騎打ちになるのが王道ですから、当たり前のように書いてます、すいません)
  •  雲母はこのとき、なにを思うのでしょうか?
     なにを見つけるのでしょうか? これが、このお話の最終ピース。
     プロットでは、そのピースを上手いこと配置しておくのです。
  •  はー! 今回も書いたぞ!
     どうだね! プロット苦手作家の私の、苦肉のプロット作成術、ちょっとはためになりましたでしょうかっ?(頼む、なると言ってくれ)
     いやはや、大事なところを「そんな感じ」でぼかした気もしますが、雰囲気で分かってください。
     プロットができましたら、次回はいよいよ本文を書く段階です。
     いざペンを手に握り、これから面白いもんを書いてやるんだぜと期待に打ち震えながら、(なんなんだこの言い回し……)
     次回もまた、お会いしましょう!
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