小説書こうよ!BL小説の書き方
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文章は平易に、描写は適切に、読者さんを迷子にしないように書きましょう

キャラ立てにはエピソードをからめて

  •  話が前後しますが、もう一つ一章の中でやらねばならないキャラだてについて。
     これは単純に「雲母は強がりだけれど、心の内ではいつも孤独を感じていた。」と書くだけよりも、エピソードをからめたほうが印象に残るので、ぜひエピソードを起ち上げてください。
     もうまんま、主人公のキャラが分かるエピソード! という目的でエピソードを作るほうがいいです。
     有名なエピソードだと、
  •  朝、出がけに遅刻遅刻~! と言いながら食パンくわえて走り出す女子高生。

  •  秀逸だわ……。一発で主人公の性格が分かるわ……。ここまで分かりやすいエピソードは私も作れた試しがありませんが、まあ一緒に目指してこっ!(突然はしゃいで誤魔化すやつ)
  •  例として雲母のお話でエピソードを作ってみると、

  •  苦学生の雲母が大学の同期に遊びに誘われて、バイトがあるからと断り、「あいつ付き合い悪いよな」と陰口を叩かれるのを聞いてしまい、(こっちの苦労も知らないで言いたいこと言いやがって。じゃあお前らも貧乏やってみろよな)と思うシーン(雲母の負けん気の強さを提示)


  •  バイトをばりばりこなしつつ、ちょっと体に無理がきてるところや、自分と違ってサボりながら仕事をする他のバイトメンバーに苦言を呈して煙たがられるところ、雲母のほうが正論なのに店長から「まあまあ、渡瀬くんがあんまり言うとバイトの子みんな辞めちゃうから」となぜか雲母が悪いように言われたり……などのシーン(雲母の真面目さ、空回りの貧乏くじ具合を提示)


  •  バイトのゴミを外に出しに行ったとき、楽しそうに遊んでいる自分と同世代の子たちを見かけて、(いいな……俺だってほんとは……)と思いかけて、ハッとして自分に活を入れ直す。(雲母が本当は傷つき孤独なことを提示)

  •  みたいに書いていくかなあ。
     で、このバイトから帰ったら母親の学費貯金使い込みが発覚し、踏んだり蹴ったりな流れですかね。雲母くん、ごめんよ。

本文執筆時に意識するべきこと

  •  本文を書くにあたって、私が意識していることもお伝えしてみます。
  •  まず一つ目は、先ほども書いたのですが、場面が変わるごとに必要とあらば5W1Hの指さし確認を入れるようにしています。
     これは読者さんが、「あれ、今どこにいるの? なにしてるの?」と小説の中で迷子にならないように、道案内として入れていくんですね。推敲のときにでもいいので、読者さんが迷わないように書けているか、チェックします。
  •  それから、描写の過不足のチェック
     描写にはいくつか種類がありますが、BL小説では特に大切なのが心理描写です。心理描写がちゃんと足りているか、逆に不要なところはないか、意識します。
     他には情景描写状況描写ですね。情景描写は書き方によっては心理描写になります。
     状況描写は、例えば主人公が住んでいる家がどんな間取りでどんな建物で、どんな街中にあって……などなどの、いわゆる「説明」です。
     すっごく難しいんですが、小説で長々と説明するのはあまりよろしくありません。読者さんが退屈してしまうからです。なので「説明」を説明文として書く量は、地の文全体の一割くらい、と私は考えています。でも複雑な話だと、一割の説明文では説明が行き届かないことがほとんど。なのでその場合は、「説明」を「描写」に変えて伝えるように心がけています。

「説明」を「描写」に変える方法

  •  「説明」を「描写」に変える手っ取り早い方法は、主人公の感情にからめて書くか、エピソードにからめて書くか、です。
     ちょっとやってみましょう。
  •  A その道は薄暗く、治安も悪いところで、柄の悪い男たちがよく歩いている。

  •  B 雲母はその道が苦手だった。薄暗くて視界が悪いうえ、歩くたび、柄の悪い男たちとすれ違う。虚勢を張っているだけで腕っぷしに自信のない雲母は、内心ではいつも怯えながら、足早に通り過ぎることにしていた。

  •   Aが説明で、Bが描写です。Aだけ見るとべつにこのままでよくない? と思われると思います。そうです、このままでもいいです。笑
     でも、Aのような文章が十行も続いていたらさすがに作文になってしまうので、Bのような文章を入れて緩急をつけるイメージですね。
     あと、描写にすると雲母の性格とか普段の行動とかも入れられます。難点は、描写は説明に比べて長くなる点です。
  •  BLはキャラクター小説なので、台詞と地の文どっちが大切か。ということを議論しだすと答えがないのですが、私自身は、新人のころ担当編集さんに「会話だけ読んで成立する話は書かないこと」と戒めを受けました。
     ようは、地の文を読ませてくれ、というリクエストです。
  •   地の文の九割は描写です。描写は、語彙力や基本的な文章力がなければ長く書くことができません。言い換えれば、描写を増やそうと工夫すればするほど、語彙力や文章力が底上げされていくと実感しています。
     もちろん不要な描写を増やす必要はありませんが、視点人称問題のところでもお伝えしたとおり、どうしたら読ませる文章を書けるだろう、と頭を悩ませ、工夫することが、小説上達のコツなので、なるべくいろんな描写をしてみてほしいなと思います。
     まあ言ってる私もまだ道半ばなのでね……描写は奥深いからね、まだまだ研究中よ。
  •  描写でいうと、メリハリという大事な要素があるのですが……。
     ここは長く描写する! ここはさくっと飛ばす! というふうに書き分けることで、作品に緩急が出るんですよね。
     特に感情が大盛り上がりに盛り上がるところでは、描写も盛りに盛っちゃうのが常套手段かなと。あとは「溜め」を作るのも大切です。
  •  状況が急展開するときは、逆に端的にバシ! バシ! バシ! と短く切り上げます。戦闘シーンとかそうですね。
     まっ、書けば書くほど上手くなるところだし、この人上手いな~と思えるプロ作家さんがいれば、その方の地の文を研究してみるとよかですよ! ちなみに私は投稿時代、うめえ、と思う作家さんの文章を音読したりしてました。

文章はシンプルイズベスト!

  •  さあさあ、本文を書くにあたって私が意識していること、大詰めです。
     めちゃくちゃ大事だけど、わりと忘れられがちなこと。それは、「文章を平易に書く」ということです。
  •  文章は平易であればあるほどいいというのが持論です。
     この人ならでは、の文章はですね~、選ばれし一部の作家さんにしか与えられない特権なのよ……。癖があっても読ませるっていうのは才能だと思うのです。
     私は平凡な作家ですから、平易な文章を書きんさい、と自分に思ってます。
  •  なぜ、平易を目指すのか? 癖が強いと、読者さんの読書のノイズになるからです。
     最初からトバしてく話だぜ! という意図で書かれているものは別として、普通の長編に、あんまり作者の自我が滲んでいると、知らず知らず読者さんがストレスを感じてしまうことがあります。せっかくのお話を、文章の癖のせいで楽しんでもらえないのは勿体ないなと思うんです。
  •  じゃあ、平易な文章とはなにか。定義はありませんが、個人的には小学三、四年生あたりの国語の教科書を参考にするといいかなと思います。もし手に入れられたら、気になった一編をぜひ音読してみてください。流れるように読めるのが分かると思います。
  •  一方、平易ではない文章は音読するときに喉にひっかかったり、言いづらい言葉が続いたりしやすいです。
     そのため私は小説を推敲するとき、必ず音読するようにしています。(このコラムは音読してないから偉そうに言って大丈夫なのか心配になってきたぞ……)
  •  あと平易な文章にはものすごい武器がありまして。それは、ここぞ! という場面で、平易ではない文章を差し込むことで爆発力がアップするという……ボーナストラックがあるんですよ!
     いわゆるギャップ萌えみたいな?(違うわ)
     使わない手はない。

「なんとなく」は徹底的につぶす

  •  それから……。
     これは平易な文章というより、私が作家として、これこそがプロの仕事である、と自分に課している矜持の話なのですが。
     投稿時代から新人になって二年目くらいまで、私は文章をただ、単純に置いてたんですね。
     で、なぜここにこの文章が入ってるんですか? と、担当編集さんに聞かれることがままありまして。そのとき、毎回答えられなかったという経験があります。
  •  なぜって……だって、そういうものだと思ったから。という理由だけで文章を置いていたんです。
     でもこれは作家として良くない、とあるとき思い直しました。
  •  そこで推敲のときに、「なぜこの文章を選んでここに置いたか」を一文ごとに考える癖をつけました。
     そうして理由が説明できないものは理由が説明できる文章に直すか、不要と見なして削除するか、選ぶようにしました。
     同時に、一冊の本の中に、一文か二文は、説明できない文章を残してもいい、とも決めました。このへんは、作家としての第六感で、説明はつかないけれど必要な気がする、という文章がたまにありまして、実際そのお話の続きを書いたりすると、その文章が伏線になったりした経験から、そう決めたわけですが。
  •  それでも、残すのは二文までです。短編だったらまず一文も残しません。
     作品の隅々まで、どの台詞、どの地の文も、どういう意図で私が選んだか、作者の私が誰に向かってでも説明できる
     これが私のプロとしての矜持でして、ぼんやりと置いただけの文章を読者さんにお見せしたくない、という意地でもあります。
  •  もちろん読者さんは、作品さえ面白ければ多少文章が乱れていても受け入れてくださいます。でも、やっぱりできるだけ誠実に書きたい、と思うと、小説は文字だけで構成されてますから、その文字一つ一つと向き合っていくしかないなと思うんですよね。
     たとえ一文ずつ精査したうえで出せる説明が、「ここはもっと上手い書き方があるはずだが、他に思いつかないのでこのような文章にした」だとしても、作者の私がそれを自覚できているかどうかが、大事だと思っています。
  •  もっとも、これは超! 個人的なポリシーなので、あなたにもそうしてほしい、というわけではないのですが、やっぱり上手な作家さんの文章って無意味に置かれたものがないんですよね。
     いやー、作家ってマジ、文章うめえですよ。その中でも国語の教科書はレベチなんでマジお勧めっす。
  •  なんかちょっとスパルタなこと言っちゃった気もしますが、すぐにできなくて大丈夫です。私なんて投稿し始めてから足かけ十年で、「文章、全部説明できなきゃやばい」と気づいたわけで、「無意味な文章排除機能」がつくにはそこから七年ほどかかった……というスピード感なので、とにかくコツコツやっていけばいつかは上達します。
  •  あとは推敲という武器がありますからね。初稿では、上手く書くことよりも感じたこと、思ったこと、書きたいことをぶつけて書いてみる勢いのほうが大事かなと。これが作家になって十年くらいすると、「待て。この書き方では早晩詰むぞ。エピソード変えたほうがいい」とか変に小賢しくなって、なかなか初稿が書き上がらないとかありますから……。(私個人の話をさもみんながそうであるかのように語るでない)

とにかく書き上げてみよう!

  •  本文を書くときに気をつけることを書き連ねてみましたが、最終的にはいろいろ考えても仕方ありません。小説はとにかく最初の一文を書いて、おしまいの文章まで書き終えるのが一番大切です
     身も蓋もないこと言うと、書き方なんぞ好きにせい! ではあるのです。
  •  そして書き終えたら推敲という、大きな作業が待っています。
     小説は、初稿より推敲が山場だと、私は思っています。
  •  では次回は推敲編、のその前に!
     「濡れ場の書き方」と「書いている途中でかかる、この話面白いか? と疑って行き詰まる病」について書く予定です。
     そういえば、質問も下部のフォームから受け付けておりますから、ぜひご利用くださいね。一つも質問がなかったら……そのときは、私が私に質問します。そうなったら悲しいので質問してください!
     優しく抱くから……。
     くっ、どうしてお前はそう煽るんだよ……っ。
     BLの攻めがよく言う台詞を残して今回は締めにしたいと思います。
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