2023.02.02 濡れ場は心理描写。執筆中にかかる『この話面白いのか?病』について
- こんにちは、樋口美沙緒です。『小説書こうよ!』もなんと四回目ですねえ。何気に二週間更新って早い。あっという間だ。そんなこんなですがみなさん、小説、書いてますかーーーー!?
- 2023年になって、もう2月になりましたよ。やばいね。早いね。恐ろしや。
- とはいえこの原稿を書いている現在は22年年末です。でもこのコラムが出てるころにはきっと「もう今年の1月が終わってしまった……なんにもしてないのに」と絶望しているだろうからその気持ちを先取りして書いておきました。毎年繰り返してるんだからどうせそうなのよ。
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ちなみに22年年末の私がなにをしていたかというと……新刊の改稿をしておりました!
普段はだらだらやるんですけど、ちょっと締め切りが他にも重なっていたので割と真面目にやってましたよ。 -
前置きはこれくらいにして、前回、とうとう本文を書き始めた私たち。(私たち、と突然仲間にしていくスタイル)
本文を書くときに意識すべき点は前回書いたので、一気に推敲編に行きたいところですが、本文執筆中にちょっと考えておきたい点がありますので、今回取り上げてみますね。 -
一つ目が前回予告したとおり、「濡れ場の書き方」。
そして二つ目が、「書いている途中でかかる、この話面白いか? と疑って行き詰まる病」について、です。
どんな濡れ場を書く?
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ふむふむ、やっと「BL小説の書き方」っぽくなってきたんじゃないですか? 濡れ場はBL小説にはほぼ必須ですからね。
そして実はかなり書くのが難しい、難所だと私は思っています。いや、得意な人もいらっしゃるのでその方たちにとったらなんてこたぁない部分かもしれぬのだが。 -
とはいえ、あくまで個人的意見ですが、BLの濡れ場には二種類あるような気がします。
一つは、エロをエロとして楽しむための濡れ場。単純にエロいシーンを読みたい! エロを楽しみたい! という方に向けた書き方がまず、あります。 -
こちらは最近、ネット小説ですと、淫語やハート喘ぎ、濁点喘ぎなどのタグ付けがされ、男性向けアダルトコミックスの表現が混ざってきている印象です。商業小説の場合は、さすがにそこまで強い表現はまだ少ないと思うので、イメージとしては濡れ場を中心として人間関係やストーリーが展開していくような作品がそれにあたるでしょうか。
この様式の濡れ場に関して、私が言えることはありません。己の欲望のまま、思うままに書いてほしいッッ!!
個人的にはこういった濡れ場の書き方は好きです。作者さんの「これが書きたいんだよ!」というパッションに溢れていて、なんだか元気になりますから。 - そういえばその昔、まだ私が一投稿者だったころ、BLレーベルの中でも比較的濡れ場に強いレーベルでは、最低三回性描写を入れなければならないらしい……という嘘か本当か分からない噂を聞いたことがありました。
- 実際にはどうだったのかいまだに分かりませんが、「濡れ場を中心に話が展開する小説」ならば、たしかに最低でも三回は性描写が必要だろうな~と思います。いやむしろ、三回で足りるのか!? お話が転がるきっかけが濡れ場なら、物によってはもっと必要かもしれないなと思います。
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性描写中心の小説を商業で書くのも、かなり技術が必要なんじゃないかなあ、と想像します。複数回濡れ場を入れるなら、当然全部違った濡れ場にしなければならないでしょうし、読者さんに楽しんでもらうためには、シチュエーションや攻めの攻め方(……と言うしかない、キスやら前戯やらのあれですね)を工夫しないといけないでしょうし。
なにより読者さんに、「おお、エロい!」と思ってもらわないとならないので、表現が巧みである必要がありますよね。うーんすごいぞ。 -
私は濡れ場を中心に展開する小説、は番外編などの短編でしか書いたことがないので、みなさんにご教示できるほどの知識がないのですよ。
たまに読者としてそういった作品を読むと、「う、うわあっ、ついに受けちゃんにこんなことを!? えっ、今度はこんなことしちゃうのっ? 攻めくんきみってやつは……。この作家さんエロうま!! あ、天晴れすぎる~~~!!!」という気持ちになります。序盤のエッチシーンからどんどんボルテージ上がっていくから、悶えさせられるんですよね。あれはすごい技術だわ。 -
なので我、エロ道を究めんとする者なり、な方々は、今まで私が書いてきたキャラ作りもプロット作りも本文中で意識すべきことも、全っ部忘れていいので(おい、お前)エロが上手い商業作家さんの小説を読みに読みまくって己の血肉としてください。
俺から言えるのはそれだけだぜ。
いや、今まで書いてきたことが役に立たないってわけじゃないんだけど、テーマも葛藤も話の流れにも、性的なものを絡めていくってだけなんですが、これを語れる資格が私にないのだ……許してくれ。 - というわけで、私がこれから説明する濡れ場の書き方は、エロとして楽しむための濡れ場ではないということです。
心理描写としての濡れ場について
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がーん、残念なお知らせですみません……。私はエロとして楽しむための濡れ場は書けねーんですよ。いや、書けるのかもしれないけど書いたことが(ほぼ)ないんだわ……。
でも安心してください。
読者さんの中にはエロをエロとして楽しみたい層(もしくはモード)も存在しますが、一方で心理描写や人間描写としてのエロを読みたい層(もしくはモード)も大多数で存在しているはずです。
私がアプローチしている性描写シーンは、後者の読者さん向けに書いているものです。 - そして単刀直入に言うと……濡れ場は心理描写の一つです!
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ドン! ドドン! とここで効果音を入れてほしいくらい、一番大事なことを言ったぜ。
濡れ場はイコール心理描写なんです! 以上終わり!
いやほんと、マジでこれ以上言うことないんですよ。濡れ場を本編の流れから切り離して考えずに、本編の流れを汲んだ、心理描写のシーンという位置づけで書くのが、私の知っている濡れ場のコツなんです。 - ちなみにここから先に出てくる「濡れ場」や「性描写」は全部、心理描写としての濡れ場や性描写を指してますので、先ほどあげた「濡れ場を中心に展開する小説」には当てはまらないこともあるかもしれませんから、そのつもりで読んでくださいね。
- 濡れ場というと、まるで独立した一つの……なんというか、特別なシーンのように感じている方もいるかもしれません。でも濡れ場は、前のシーンと後のシーンの心の動きを繋ぐためのものなんですよね。
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投稿時代の私はこのことに気づいていなかったので、濡れ場を読者サービスのシーンだと位置づけていました。
読者サービスだから、テンプレートどおりに受けが攻めにキスされて、愛撫されて、挿入されて、絶頂すりゃーいいんだよね? と思っていたわけです。 -
でもそういう位置づけで濡れ場を入れると、お話の中でその濡れ場だけが浮くというか。しっくりこなくなるというか。
ここに濡れ場を入れる必要があったのか? と問われると、「ないんだけど、読者サービスだから入れた」という答え方になっていました。 -
でもそれだと、濡れ場が心理描写として機能していない状態だったんです。
キャラクターを生きた人間と同じように考えてみると、そんなに適当に濡れ場を入れることはできないと思います。 -
この主人公の子がどういう性格で、どんな価値観で、今どういう状況で、お相手とはどんな関係性で、どういう状態でなら、この二人はセックスに至るのか。
というのを、作者がちゃんと考えていれば、入れるべき場所で濡れ場が入ってきますし、その性描写も、そのときの二人がどういう人たちでどういう状況なのかによって、違ってきます。 - ずっと想いあってきたけどなかなか結ばれず、やっと結ばれて、初めて抱き合えた、という場合と、もともと憎み合っている二人で、攻めが受けを傷つけるために抱いた……という場合では、受けの反応も心理状態も、攻めの攻め方もその終わり方も全然変わってきますよね。
- ちなみに、BLのいにしえからのしきたり、挿入される側が受け、する側が攻めという法則? に則りまして、受けのほうは反応、攻めのほうは攻め方、と表記していますが、もちろん受けのほうから攻めることも含めている、と思ってください。
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どちらにせよ、そのときの関係性と心理状態と性格によって、受け攻め両方の行動が変わってくるという意味です。
そして性描写のシーンでは、主人公と相手の行動そのものが、その心理と一致するんです。
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