小説書こうよ!BL小説の書き方
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プロットはお話の設計図です

  •  こんにちは、樋口美沙緒です。やってきました『小説書こうよ!』第二回目は、プロット回であります。
  •  先日、アルファポリスさん主催のBL小説大賞の結果が発表されましたね。入選された方、おめでとうございます! 落選された方、またチャレンジしてくださいね。(審査員でもなんでもないやつがなぜか応援する謎のケース)
     いや、なんていうの……つまりさ……落選された方、よかったらこのコラム読んでさ、次回作書いちゃえばよくない!? っていうご提案です。我ながら図々しい提案だ。まあ気が向いたら……よろしく……へへ。
  •  早速内容に行くわよ、四十秒で支度しな! と言いたいところですがその前に。
     前回も書いたのですが、このコラムはズバリ! BL小説でプロになり、商業作家として仕事を続けていきたいぞ! と思っている方向けに書いております。そうじゃないやつぁ読むな、と言っているわけではなく(お願い怒らないで)一応プロ志向の方向けなのでちょっくら難しいことも申しますよという内容です。
  •  が、なにも私が言うとおりにしないとプロになれないわけじゃありません。
     一応再確認しておくと、このコラムでは「私、樋口美沙緒が小説を書くときにやっていること」をそのまんま順に書いていくので、「真似できそうなところは真似してね、お前とは合わん、という人はそれでいいのです」が、スタンスです。
  •  さあて支度はできたかな? じゃあ小説の大事な設計図、計画書とも言えましょう、プロットの書き方について今回はやっていきます。

新人時代のプロットは苦難の連続

  •  と言ったはいいものの、実は私、小説を書くという一大プロジェクトの工程の中で、プロットという作業が一番苦手な人間なのです。(二回目にして早々の挫折)
  •  なにせ新人のころ、担当さんから「樋口さんはプロット書いてもあんまり意味ないみたいだからもう書かなくてもいいよ」と匙を投げられるレベルでした。
  •  そんな私は、いつか人並みのプロットを書けるようになる、が昔からの目標で、デビューして十年経ったころにようやく! 使えるプロットを作れるようになりました。(拍手! 拍手して! 私にとっては快挙なんですよ!)
  •  このように、プロットが得意な人もいれば、私みたいに苦手な人もいまして、場合によっては書かんでよろしい、ということもあります。
  •  でもそんな私でも、投稿時代は苦手なプロットを苦心しながら書いてました。当時はネットの投稿サイトなどがなかったので、小説を投稿するといったら出版社が設けている賞に送っていたのですが、見込みありと判断されると担当編集さんがついてくれたんですね。
  •  ネット小説では、ネットにあげている小説をそのまま書籍化することがほとんどだと思いますが、当時はまずはプロットを提出するよう言われ、プロットが通れば本編執筆。そして本編の改稿、というのが一般的。投稿したものや同人誌原稿がそのまま載ることもありましたが、改稿は必須で、直しなしは稀でした。
  •  で、私の場合、最初の関門であるプロットがまあ、通らなかった。何回も何回も直しを入れて、やっと通ったと思って書いても、原稿がそのまま使われることなどまずなく、私は最大十五回直しました。で、それだけ直しても、この原稿では雑誌掲載や書籍化はできないということでお蔵入り、なんていうのもザラでした。
  •  でも、あの厳しい投稿期間を、私はあってよかったなと思っているのです。
     初めて担当さんがついてからおよそ四年ほど、こうしたことの繰り返しで、いつまでもデビューできずに落ち込んでいましたが、あれがあったから今があると思っています。
  •  で! で、ですよ。四年も指導してもらったのにプロットが相変わらず下手だった私がね、やっと書けるようになったプロットの作り方をお披露目します。
     どうです、苦手なやつでもやってるんなら、こっちはもっとすげえプロットたててやらあ、と思えませんか。
     よかったらみなさん、一緒にやってみてくださいね。

プロットの3つの基本構造

  •  さて、前回のコラムで渡瀬雲母くんというキャラを作りました。せっかくなので彼を主人公に、お話を考えてみることにします。
     え? 雲母って誰? と思った人。前回コラムを読んでくれ。説明するには字数が足りねえ。
  •  プロットを作るにあたって、雲母くんのお相手攻めくんも設定。
     なんにも持っていなくて、それでも「努力は実ると信じている」雲母くんに「努力は実らない」というアンチテーゼをぶつけてくる相手です。糸尾要くんと名付けました。
     私の場合ですが、プロットで書く点は以下の三つです。
  •  まず【テーマ】
     たとえば「自信のなかった子が自信を持つようになる」とか、「高校の文化祭を成功させる」とかですね。基本的には「心のテーマ」と「出来事のテーマ」の二つを作ります。
     心のテーマは、私の場合「主人公を成長させる」ことを主軸に置いています。成長が書きたいわけではない、という方も「この小説の始まりと終わりで主人公がどう変わっているか」を、頭に置いて書くとやりやすいかなと思います。
  •  もちろん、「始まりと終わりで主人公はまったく変わらない」というものを書いてもいいんです。小説に決まりはありませんから。ただ、成長や変化に理由があるように、変わらないことにも理由があるものなので、その理由をちゃんと自分で選んで決めておくことが大切かなと私は考えています。
  •  それから次に【キャラクター】
     主人公は必ず最初に作ります。なぜならそれが物語のテーマに直結するから、というのを前回のコラムで書いたので、忘れたぜ! という方はお暇なときにでも読み返してみてくださると嬉しいです。で、主人公以外のキャラを、プロットを作る段階で同時に決めていきます。
  •  最後に【大筋】
     ようは、お話の大まかな流れですね。お話の筋を決めるときに注目するべきは二つ。
     一つ目が「出来事」です。なにが起きるか。大きくても小さくてもいいので主人公の身に起きる事件を時系列順に決めていきます。
     そして二つ目が、出来事によって引き起こされる「主人公の感情の変化」です。感情が変化するということは、その前提として変化する前の「感情の状態」もあるので、それも書いておきます。例としては、
  •  大好きなケーキを買って上機嫌で(感情の状態)家に帰っていたが途中でこけてしまい、ケーキを潰してしまった(出来事)のですっかり落ち込んでしまう。(感情の変化)
  •  と、いうようなイメージですかね。これをお話の最初からエンドマークまで、大雑把に書いていくのが基本のやり方です。
  •  ところで、この三つのうち、作家さんによっては【テーマ】は決めずに書く方が結構いらっしゃいます。たしかに、べつに決めなくても書けるものではあるのですが、私個人としてはテーマを決めておいたほうが安全かなと考えています。
  •  理由の一つは、プロであれば編集者さんにプロットを見せるので、自分がなにを大事にしてこの作品を書こうとしているのかを共有することで改稿指示が的確になり、一石二鳥、作家にとってもお得だからです。それからもっと大切なことは、このお話のなにを大切に書きたいのかが、自分の中で明確になるから。
  •  先ほども書いたとおり、「自信のなかった子が自信を持つようになる」がテーマなら、そこを一番書きたいのだ、と自分で理解できますし、お話に行き詰まったときには、そもそもこの話のテーマってなんだっけ? と振り返ることで、本当に必要なエピソードやキャラを選ぶことができるようになります。テーマは、小説の道しるべになってくれます。決めたら変えるな、というわけではありませんが、立ち返るべき場所として、作っておくと便利かなと思います。
  •  ちなみに、私は、プロットを作らずに書くときでも【テーマ】と【キャラクター】だけは決めてから原稿に入っています。それくらい、この二つは大切な要素だと思っています。
  •  ここまで書いてきといてなんですが、マ~ジで私、プロットは苦手分野だからさあ……。ただ、だからこそプロットがうめえ人はなにが違うんだい、と常に考えていました。
  •  そこで私が感じたこと。プロットが得意な人に共通しているように見えるのは、大筋における「出来事」を作るのが上手いということ。なので私のようにプロットが苦手な人がいるとしたら、大筋を書くときに「出来事」がちゃんと筋道だって起こっているか、テーマに絡んでいるかに注目してみるといいかもしれません。
  •  とはいえ、BLは恋愛小説なので、事件が起きているのは心の中だけで、表面上はなーんも起きてないんだわ! みたいなこともあると思います。
     そういう場合は本当に些細なことでいいので、なぜ心の中でこの事件が起きているか、考えてみるといいでしょう。そうです、最終的にはこじつけてやりゃあいいのです。(突然の横暴な言い方)

プロット作りの、はじめの「は」

  •  ところで、みなさんはプロットを作るとき、まず初めにどんなことをしているでしょう?
     私の場合、昔はワードを起ち上げて、【テーマ】【キャラクター】【大筋】と書き、うんうん唸りながら一日かけて中身を埋めていました。
  •  しかし! この方法は私には合わないし、効率も悪い、と気づいてからはちょっとした工夫をするようになりました。
     それが一人ブレインストーミングです。
  •  まず、紙とペンを用意します。個人的にはA4以上の大きめの紙が好きですが、特に決まりはないのでお手元のノートやチラシの裏などをお使いください。
  •  それから紙の一番真ん中に、主人公の名前を書いて丸で囲みます。
     その周りに、出てくるキャラの名前や名詞を同じように適当に書いて丸で囲みます。時には、主人公のテーマや、目立つ感情なども書いておきます。
  •  さあ、準備は整いました。
     今回このプロット回を書くにあたって、私は実際に渡瀬雲母くんを主人公にしたブレストを行ってみました。それがこちらです。
  • ジョハリの四つの窓
  •  真ん中に雲母くんの名前を書き、攻めの要くん、メイン脇役の京くんの名前を置き、あとは「母」「弟」を置いて開始しました。
     字が汚くて読めない? すみません、それは本当に謝るしかないぜ。
     雲母くんの葛藤は「努力は実ると信じている」のに「努力が実らない」ことです。(※前回コラム参照)
  •  つまりお話は必然的に雲母くんがなにか「努力」する話。そして結果的に「実るか、実らないか」の結末を迎えるもの、になります。
  •  ここでもし、キャラの抱える葛藤とは違うお話が書きたいときは、書きたいものに合わせてキャラメイクをし直してみてくださいね。(私はキャラクターから作りますが、お話から作って、それに合わせたキャラメイクをするという順番でももちろん大丈夫)
  •  さて、雲母が努力する舞台やストーリーはどんなものがいいだろう。
     私が考えてみたのは、「母親に学費を使い込まれた二十歳の雲母が、料理系リアリティショーに出て優勝し、学費を稼ごうとするも、強力なライバル(攻め)が立ち塞がる」という内容です。
  •  「料理系リアリティショー」については、出された食材でなんでもいいから美味しいものを作り、審査員が点数をつけ、視聴者票も加味しつつ、毎回二人脱落していき、最後に残った二人で頂点を決める……という中身にしよう、とも決めました。
  •  なんかどっかで見たことあるなと思った方、ご容赦くだされ。コラム用のプロットですから実際に書くわけじゃねえで、例文っちゅうことで一つ……(ぺこぺこ)。
  •  まあ雲母のテーマから考えて、アイドルのオーディションでも、大学のミスターコンでもいいんです。大事なのは「努力してたった一人だけ選ばれる」というシチュエーションがあることですよね。テーマがそこにあるんだから。
  •  私は普段、こういうストーリーをブレストしながら考えていっています。他のキャラとの関係性や相手からの感情、お話が終わるときに雲母がどう成長してほしいかも決めます。
     あとはリアリティショーを題材に使うと決めたので、テレビ収録は何回あって、何名からスタートで、一回の脱落者が何人で……なども、適宜調べながら設定していきます。
  •  ここで大事なことは、主人公の名前を真ん中に置くこと! だと、私は思っています。
     お話の軸が主人公にあること。どんなにキラキラした脇役がいたって、このステージでのセンターは主人公なのだ! ということを、視覚的に自分へ刷り込めるからです。
  •  そして主人公が真ん中であれば、他のキャラの名前や物事も、主人公中心に考えられます。ちなみに、スピンオフや第三者視点のお話を書くときは、真ん中にその視点人物の名前を入れたら同じ方法が使えますよ。
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