小説書こうよ!BL小説の書き方
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創作のお悩みに、答えてみますぞ!

  •  こんにちは、樋口美沙緒です。『小説書こうよ!』もついに第五回目となりました。
     全十回連載なので、折り返し地点ですね。
  •  さて、前回までに私たちは(相変わらず勝手に仲間にしていくスタイル)キャラを作り、プロットをたて、本文を書き始め……濡れ場の書き方とモチベーションの保ち方について考えてまいりました。
  •  そして今回は! ドン!(効果音)みなさんからいただいた質問のいくつかに、お答えしていこうと思います~~!! イエーイ!(ノリが古……)
  •  質問を送ってくださったみなさま、本当にありがとうございます! おかげでホッとしました。一つも来てなかったら自作自演しかない……と怯えていましたので。
     さてさて字数の問題もあるし、さくっと行こうかねえ。
  •  まずはこちらから。

質問① エピソードを強くするには?

  •  「強いエピソードを生み出す発想力不足」に悩んでいます。
    例えば、
    1.受けが正反対の攻めに出会いa.反感を抱く
    2.でも意外な面、自分にだけ見せる面を知りb.徐々に惹かれていく
    3.向こうもこちらを好きかと思った辺りで、c.なにか重大なすれ違い
    4.すれ違いをd.なにかしらの受けの努力で克服して、ハッピーエンド
    という話があったとき、abcdのエピソード選びによって、面白さやそのお話独自の個性が出てくるものだと思うのですが、
    a「馴れ合うつもりはない」とか言ってくる
    b「野良猫にやさしくしてるところを目撃」
    程度の発想しか出ないときがあります(笑)
    どうしたらこういうひとつひとつのエピソードを強いもの、エモいものを生み出す訓練ができるでしょうか?
    やはり沢山インプットをして、いい! エモ! と思ったところを意識してメモをとるなどでしょうか。それとも、キャラをとことんまで掘り下げたら自然と生まれるもので、生まれないのは掘り下げ不足ということでしょうか?
    先生は、ここの部分の訓練で、なにか意識してやってらっしゃることはありますか。差し支えなければ教えていただけますと幸いです。
    (HN 月子さん)

  •  なるほど……!
     エピソードを考えるのって難しいですよね。その悩み、私もよく分かります。
     私が実践していることの一つは、普段からいいな~と思うものをメモしておくことです。これは月子さんが仰ってるまんま、そのとおりですね。
  •  なんとなく見た映画やドラマ、過去に読んで好きだなと思った小説のシーンなどを溜めておき、そのまま使うわけではありませんが、自分なりにアレンジして使う。
     例えば拙作、『パブリックスクール-檻の中の王-』(徳間書店・キャラ文庫)の作中で、主人公の礼が幼少時、母親からとあることを諭されるシーンがあるのですが、これは再放送で見たアニメ『ペリーヌ物語』からのオマージュというか、心に残っていたところを私なりに再解釈して書かせていただいてます。
     ですがこうしたやり方は、ある意味小手先の技術と言えるでしょう。
    (いや、既にある作品からエッセンスを抽出し、自己流にアレンジするのは大変なことではありますが)
  •  本質的には、月子さんも仰っているように、キャラクターを掘り下げることがエピソードのエモさに直結してくるんじゃないか、というのが私なりの持論です。
     エモ、とはエモーショナル、つまり感情的、感情が揺さぶられている様ですよね。エモいシーン、というのは、読んだ人が心を動かされるシーンのことだと思います。
     では、どうしたら読み手の心を動かせるか?
  •  まず一番に考えなければならないのは、読み手の心を動かしたければ、書き手の心が動いていなければなりません。そして書き手の心の動きは、主人公の心の動きでもあります。
     主人公が非常に感情的になっている描写、強くなにかに思い入れていたり、衝撃を受けていたり、心が揺さぶられているその姿に、読み手もぐっと引きつけられて、感情的になるのではないか。私はそう考えています。
  •  主人公の心が激しく動くシーンを書こうと思うと、主人公をよく知る必要があります。
     この子はどんなことに傷つき、喜び、悲しみ、動揺し、幸福を感じるだろう。なにを信じていて、どんなことがあると驚くだろう。
     私自身は、眼の前に、これから親友になろうとしているたった一人の人間がいると考えて、主人公のことを知っていくようにしています。
     奇抜なエピソードを考えることよりも、主人公の抱えるテーマに沿って心の動きを大事に描写してみるほうを、私としてはお勧めしたいです。
  •  例えば、
  • a「馴れ合うつもりはない」とか言ってくる
    b「野良猫にやさしくしてるところを目撃」

  •  というエピソードでも、私はなんの問題もないと感じますよ。
     このエピソードで書いても、十分エモさは出せると思います。
     絶対に受け入れてもらえると確信していたのに「馴れ合うつもりはない」と言われたら、主人公の心は激しく動揺しますよね。
     その主人公の心のありようを月子さんなりの解釈で描けば、一見するとありふれた場面のようでも、月子さんだけが書ける特別なエピソードになります。
  •  問題は、エピソードのオリジナリティよりも、説得力のある描写です。読者さんの心を動かせる描写さえできれば、どんなありきたりなエピソードでも輝きます。
     その昔、編集さんに言われた忘れられない言葉シリーズに、こんなものがあります。
  • 「物語には、三十六のパターンしかない」
  •  ううむ、かっこいい。言ってみたい。
     三十六の詳しい内容は知らないのですが(おいこら)言われてみたらそんな気がするよね!(適当な人間性が露わになってるぞ)
  •  要するに、どう頑張っても物語のパターンなんて限定的なので、エピソードのオリジナリティはさほど重要ではないという意味です。
     なぜなら書いている月子さんが、この世界でたった一人のオリジナルじゃないですか。
     だから月子さんの感性を、持ち味を、ものの見方や感じ方を文章に込めれば、エピソードがどれだけ平凡でも、独自性のあるものになるということです。
  •  それと、再三言っておりますが、我々には推敲という武器がある!
     一度書いても上手くいかなかったら、直せばよいのだ!
  •  あとはもう一つ、先にエピソードから考えていく、という方法もあります。どうしてもこういうシーンを入れたい! というのをいくつか作っておいて、逆算してキャラクターの深掘りをするパターンです。
     そのやり方がしっくりくる方も多いでしょう。今までのやり方で上手くいかなかった場合、こうした手法を試してみるのもよいかなと思います。
  •  私としては前述のとおり、描写によってエピソードのエモさはコントロール可能だと思っています。
     うーん、これはもう秘伝中の秘伝なのですが(あくまで当社比)感情描写を深く、強くしようと考えるなら、描写を長くするのがコツです。
     驚き、悲しみ、喜び、怒り。
     どんな感情であれ、とにかくしつこく描写を重ねれば、感情描写が密になり、自然と深くなります。
     このとき、心理描写と一緒に情景描写も入れてみるとよりよくなります。
     または刹那的なエモさを求めるなら、他の描写とは少しだけ文体を変えてみるのもいいと思います。本文編で「平易な文章を書こう」と伝えましたが、他の文章が平易であれば、こういうときに少し文体を変えることでシーンの情感を演出できます。ぜひ試してみてください。
     お、俺の秘密を全部教えてしまったぜ。恥ずかしいのはなぜなんだぜ。
     答えになったか分かりませんが、一度やってみてくださると嬉しいです。 さて、次にいきましょうか! お次はこちら。

質問② 書いているうちに物語は変わる?

  • 普段物語を書く際にエンディングまであらすじを全て決めてから執筆されていますか?
    また書いているうちに作者の意図を超えて"主人公達が勝手に動く"という話をたまに聞きますが、書いているうちにストーリーやエンディングが途中から変わったことはありますか?(あるとしたらどの作品でしょうか) (HN ほしのこえさん)

  •  ほうほう……。ほしのこえさんは、エンディングを決めずに書かれるのかな? もしそうでも、それはそれでスタイルなので心配せずにそのままでも大丈夫ですよ。
  •  私の場合をお話しますと、テーマを決めてから書くので、ひとまず最終的にそのテーマがどうなるか、ということだけは決まっています。
     例えば、「自信のない主人公が恋人と結ばれて自分を信じられるようになる」とか、そのレベルではありますが。
  •  ただ、そこへ行き着くまでの道のりについては、決めて書くこともあれば、決めずに書くこともあります。最近はある程度決めてから書くことのほうが多いですかね。
     でもきっちりと作ってはいなくて、あくまでふわっとしかプロットをたてませんので、書いているうちに「このキャラならこういう態度はとらないなあ」とか、「悲しい気持ち、と書いてしまったけど、たぶんここは怒りだな」と思い直して、書き換えたりはよくあります。
     なので書いているうちにストーリーやエンディングが変わった作品、で言えばほぼ全部! です。
  •  唯一、ほとんど思っていたとおりに書き上がったのは、『王を統べる運命の子』(徳間書店・キャラ文庫)の第四巻くらいでしょうか。こちらは異世界ファンタジーものの最終巻ということもあり、かなりきちんと道筋をたてる必要がありましたから、そのせいかと思います。(ちなみに来月三月に発売予定です。よかったら一巻からぜひ読んでくんろ……!)
  •  あとの著作物はすべて、最初の構想とは違う道筋をたどって書きあげています。
     まあ私の場合、小説なんて思いどおりに書けないもんだ、と最初から分かっているので、変更が出てもあまり動揺しないでいられる、というのがあります。
  •  キャラクターが勝手に動く、という現象については、うーん。
     あるにはありますが、なんと説明しよう……。
     これはごく個人的な体感の話ですので、他の作家さんは違う感想をお持ちかもしれません。私の場合は、「キャラクターが勝手に動く」現象には三パターンあるように思います。
  •  一、展開に詰まって、悩んで悩んで悩み抜いたときに不意に天啓のように問題を解決するなにかが分かり、トントン拍子にお話が繋がる場合。
  •  二、キャラクターのことも書くべきテーマのことも、作者が心底から理解しているので特になにも考えなくても筆が進む場合。
  •  三、それほどキャラやテーマについて理解していないのに、手癖だけで書いている場合。
  •  このうち、一と二は良い現象だと思いますが、手癖で書いているときは要注意。
     気をつけていないと、キャラクターの本質からずれた展開になってしまうことがあるからです。
  •  こうやって書いてみるとお分かりかなと思うのですが、小説を書く作業というのは、「自分を知る」作業でもある気がしています。
     どんなふうに組み立てれば、「自分という人は小説を最後まで書き通せるのか」知る作業だったり、そもそも、「自分という人はどういう手癖があるのか」知る作業だったり。
      自分に向き合うことが、面白い小説を書く第一歩だなと、しみじみと実感しています。
  •  どうかなあ。参考になったら幸いですぞ。ではお次。どんどんいっちゃうぞ。
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