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1長編 完結 なしお気に入り : 7 24h.ポイント : 21
「シズルって、女みたいだよな」 中学の時、そう言って自分を笑っていたのは、幼馴染で友達だと思っていた相手、井高翔太(イダカ ショウタ)。 なんだよ。幼馴染なんだから、そういう噂とかを、一番に怒ってくれてもいいのに。お前が、一番に笑うのかよ。 それまで、「ショウタくん」と呼んでいた相手。その相手の裏切りに、志弦は傷つき、彼とは違う高校に進学し、彼とは違う東京の大学に進学した。学ぶ学部だって、ヤツとか被らせない。 これで、実家に帰らない限り、アイツと人生が交差することはない。 そう思っていたのに。 「今日から、よろしくお願いしまっす!」 志弦のバイト先に入ってきた、同じ大学の工学部の後輩、氷鷹陽翔(ヒダカ ハルト)。 似てるけど、名前も違う。年齢だって。顔だって。 「イダカ」と「ヒダカ」。全然違う。なのに。 ――どうしようもなく、アイツを思い出してしまう。 氷鷹の持つ明るさのせいか。それとも、その強引なまでにこっちを引っ張ってく性格のせいか。 離れたい。だけど、状況が志弦を離してくれなくて。 「俺、佐波先輩に何かしましたか?」 志弦の態度に不審がる氷鷹。でも、「なぜ」も「どうして」も説明できなくて。 「ゴメン。キミは悪くない。悪くないんだけど……」 氷鷹と仲良くやることはできない。どうしても過去を思い出して、苦しいんだ。 そんな志弦の態度に、めげることなく距離を縮めてくる氷鷹。 「俺、ちょっくら役所行って、名前、変えてきます! ついでにその〝イダカ〟ってヤツも殴ってきていいっすか?」 志弦のために。志弦と仲良くなりたいから。 そんな氷鷹の態度に、硬く閉じこもっていた志弦の心はほぐれてゆき――。 「オレ、氷鷹に会えてよかったよ」 過去のことは彼に出会うために、彼を大事に思えるようになるために用意されてた、ただのステップ。 そう思えるようになった志弦は、氷鷹の差し出す手を、自ら掴む。 文字数 66,191 最終更新日 2024.11.23 登録日 2024.10.31