主人公の西 幸利は、命の恩人の上、上司の仙石 恭一に告白してふられた。
ふられた直後、西は仙石へ襲いかかる男から仙石を庇って死にかける。
よかった。死ぬのが仙石さんじゃなくて、俺で。
よかった。
意識が朦朧とする中、俺は思い残すことのないようにもう一度伝えておくことにした。
最後にもう一度。だってもう二度と言えない。
「せん、ごく……さ」
「おい! 話すな!」
「せ、ん、さん……おれ、うらやま、し、いとおも、ったんだ……。せん、ご、さんのおくさん。へへ。だけ、ど。おれむりだ、ったから、うまれ、かわ、たら、せんご、さんの、むす、こに、うまれ、たいなぁ…・」
お腹の痛みはもう引いた。
何も痛く無い。
意識が遠のいていく。
仙石さん、好きになってすみません。
こんなタイミングで好きだなんて、性格悪くてすみません。
俺のこと、忘れないで。
「西! 生きろ!! お前が生きてたら、付き合ってやるから!! 死なないでくれ!!」
仙石さんは優しいなぁ。
そんなことを言ってまで俺に生きることを望んでくれるんですか。
「ずるい……なぁ」
だって、そんなこと言われたら、死ぬに死ねないでしょう。
タイトル変更しました。旧題 彼の左手薬指には
文字数 28,449
最終更新日 2022.3.31
登録日 2022.3.25