小説書こうよ!BL小説の書き方
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キャラクターはBL小説の命!

脇キャラにも必然性アリ

  •  ところで、メインキャラ二名(基本は受けと攻め)以外の脇キャラのメイキングについても、私のやり方をご紹介してみますね。
     脇キャラについては、特に葛藤は決めません。脇キャラを作るときに大事にしていることは二つ。
  •  一つ目は、主人公に対してどういう感情を抱いているか。また、主人公はこの脇キャラをどう思っているのかということ。
  •  それから二つ目は、この脇キャラを、この小説を書いている私という人間は、どういうつもりで登場させているのか、自分で自分に説明できるようにすることです。
  •  まず一つ目については、前述でも、BL小説は主人公を中心に! と書きました。だから脇役が出てきたときに真っ先に押えるべきは、そのキャラ対主人公の関係図なんです。主人公に対して、敵対しているのか、味方なのか、興味を持っていないのか、優しいふりして蹴落とすつもりなのか……などなど、なんでもいいけれど、どういう感情でどうなりたくて接してくるか、かなり明確にしていないと、作品がぼんやりします。
  •  よく、作品のメインカップルじゃなくて、脇キャラ同士をサブカップルにして、そちらを軸に書いてしまうパターンを見ますが、これはザ・ナンセンス(昭和の言葉のセンス……)。
  •  どんなに脇キャラ同士でいちゃいちゃしても構いませんが、小説の中でわざわざ選んで書くべきところは、その脇キャラが主人公に対してどういう態度で、どういう言葉選びで、どんな表情で接するか、です。それから、主人公がそれらの態度、言葉、表情についてなにを思うか、なのです。
  •  BL小説は恋愛小説なので、心理描写が重要なんですね。そして、態度・言葉・表情は全部心理描写ですし、相手からの表現について、主人公がなにを思うか。も、心理描写です。
  •  そして二つ目、この脇キャラを、この小説を書いている私という人間は、どういうつもりで登場させているのか自分で自分に説明できるようにする。 ですが、そもそも役割の説明もできねえくらいならやめちまいな! そのキャラ、いらねえキャラかもしんねえよ! ってやつなんですが……まあ、説明するんはえらい苦労するんですわ、なんでこの人が必要かなんてよう。
  •  それでも、自分で自分にプレゼンできなくてはなりません。「このキャラは主人公を成長させる」とか、「別の視点をくれる」とか、「嫉妬させる」とかね。
  •  現実ではぼけーっと歩いていたらいろんな人とすれ違いますが、それを全部小説に書き起こすわけにはいきません。だから、主人公の人生の、とある一時期をあなたが小説にしていると仮定したとき、「振り返ったらあいつがいたからこうなったんだよなあ」と、エンドマークに影響を与える人をピックアップして、書き起こすわけです。それが脇キャラなんですね。
  •  ところで、皆さんは脇キャラを何人くらい配置するのが適切だと思いますか?
     大体、四万字の小説で一人。以降一人脇キャラが増えるごとに二万字がプラスされる、と考えてみてください。つまり十万字に適切な脇キャラの数は基本的には四人以下です。
     これは必ず従えというわけではありませんが、目安になるのでよかったら使ってみてください。

主要キャラを多面的に考える 脇キャラはシンプルに

  •  それから、キャラクターというのは本来多面的なものです。強がっているけれど、実は寂しがり屋、とか、世の中に便利なテンプレートはいくらでもあるので、ワードだけで作ることも可能ですから、作ってみましょう。そこで是非意識してほしいのは、「メインキャラは面を多く、脇キャラは面を少なく」ということです。
  •  メインの二人については、そうですね~、六面くらい考えてみてください。サイコロのイメージで、こっちから見たらこう。でもこう転んだらこうなる。みたいに。
  •  じゃあ主人公の六面を試しに出してみましょうか。
      強がり、寂しがり屋、甘え下手、思いやり深い、自虐的、努力は実ると信じている。
     なんとなく、キャラに近づいた気がしませんか? 寂しがり屋で甘え下手とくると、このキャラの心は? 「本当は甘えたい」がキーワードで出てくる。でも、ここに強がりが入ってくると、「本当は甘えたいけど言いたくないし認めたくない、人には見せない」に変化しますね。自虐的だけど思いやりが深いなら、「自分の痛みに敏感だから、他人の痛みにも敏感」と捉えることもできます。さらに努力は実ると信じている。
  •  まとめると、「本当は甘えたいけど、そんな自分を認めたくないから態度には出さず虚勢を張っている。自己評価が低く、その分自分の痛みに敏感で、他人の痛みについても共感性が高い。一方、努力は実ると信じているタイプなため、どれだけ傷ついても強がって努力をやめない人物」と考えられます。
     この六面を分析してみてください。
     強がり、寂しがり屋、甘え下手、思いやり深い、自虐的、努力は実ると信じている。
     は、分解すると、他人への基本的態度、本音、人間関係の悩み、他者への基本的感情、自分への基本的感情、人生への信念、になりますね。
  •  ジョハリの四つの窓をご存知ですか?
  • ジョハリの四つの窓
  •  自分を理解するためにとられる心理的手法で、自分を四つの窓に分類して考えます。この窓に、先ほどの要素を対応させてみます。
  •   一つ目の窓は、他人も自分も知っている自分。ここに強がり、が入ります。
  •   二つ目の窓が、自分は知っていて、他人に知られていない自分。寂しがり屋、甘え下手、自虐的、が入ります。
  •   三つ目の窓は、他人が知っていて、自分は知らない自分。ここに思いやり深い、が入ります。
  •   四つ目の窓が、他人も自分も知らない自分です。努力は実ると信じている、が入りそうですね。
  •   小説のテーマは大体、この四つ目の窓にあることが多いです。
  •  冒頭で話した、葛藤のルールを当てはめるなら、この子は、「努力は実ると信じている」のに「努力が実らない」キャラかもしれませんよね。もうこれで一本、お話が作れる気がしてきませんか?
  •  よし、じゃあ仮にですが、このキャラを主人公に私が小説を書く、としてみましょう。
    この子の葛藤は「努力は実ると信じている」のに「努力が実らない」こと。性質は先ほど挙げたので、見た目と名前を決めていきます。身長は平均。細身、この性格と信念を見ると、生活が貧しい気がするので苦学生、お金がないから髪を染めていない、ずっとバイトをしているので基本動きやすい服装、そしてたぶん地味なほう。
    名前だけは派手だなと言われるなら渡瀬雲母(わたせきらら)はどうでしょうか。雲母というかわいい語感の名前をつける親御さんはどんな人だろうとか、主人公は自分の名前をどう思っているかなど、広げて考えることができます。一方、無難に山田弦(やまだゆづる)とかでもいいのです。弦という言葉に内包された強さと繊細さが、この子の性質に合っています。でもまあ、設定が広がりそうなので、渡瀬雲母くんになってもらって、自虐キャラですから、こんな華やかな名前は地味な自分には似合わない、と思っていることにしましょうか。
  •  で、雲母くんが恋に落ちるお相手を作り、それから脇キャラを作っていくわけですね。
     テーマが「努力は実ると信じている」のに「努力が実らない」なので、攻めはそこに絡めなければお話が進みません。雲母くんが今、自分で学費を払っている苦学生だとして、無事大学を卒業して、きちんと就職して、弟妹の学費を稼ぎたい子だと設定します。その「努力」を阻んだり、助けたりするのが攻めです。
  •  これがオメガバースものなら、雲母くんがオメガで、出会った攻めがアルファで、出会い頭にヒートとラットでえらいこっちゃで雲母くんが妊娠してしまい、当初の「努力」が水の泡となる、というのはよくある展開ですよね。
     よくある展開なんだけど、雲母くんの葛藤をここで最大限描写することで、雲母くんだけの展開になります。キャラ作りがあまりできていない小説の場合、単なるテンプレートの消費だけに終始してしまい、このキャラだからこそ、の描写がありません。わざわざ手間をかけてキャラを作るのは、どんな話の流れでも雲母くんでしか表現できない感情や関係性、人生があるからです。
  •  話を戻して、オメガバースでなくても、攻めがなにか勘違いしていて雲母くんのバイトを邪魔することになる、とか、攻めのせいでバイト先をクビになる、とかでも書けますね。
  •  ここで攻めとのとっかかりが「反発関係」から入っているのは、雲母くんのテーマが「努力は実ると信じている」のに「努力が実らない」だからです。「愛など必要ないと考えている」のに「愛してくれる人を傷つけたくない」なら、溺愛関係から入るのもいいんじゃないでしょうか。
  •  つまり、雲母くんの持っているテーマにアンチテーゼを提唱してくるやつ、が攻めなわけです。努力は実らないのかも、と思わせてくる最初の相手、なわけです。自分の人生に特大の波風(変化)を一番最初に立ててくる相手。それが攻めです。そういうふうに書くことで、読者さんに攻めを印象づけられるし、なにより受けの気持ちがグン、と攻めに向かい、お話を動かしやすくなります。
     もちろん、書いていく中で攻めの立ち位置は変えていけるのでご安心を。
  •  さて、話を「面」に戻すと、攻めキャラも五面か六面はほしいところです。
     チャラ男でのりよし、愛したがり、思い込んだら一途(相手がいない)、厭世的、この世は努力じゃどうにもならないと思っている。
     この組み合わせだと、どんなキャラが見えてきますか? 年齢や肩書きにもよりますが、練習として、少し考えてみてください。正解は決まっていません。あなたなりのキャラメイクで大丈夫です。
  •  話は飛んで、脇キャラについての「面」を考えるときは、まあ、二面もあればよかろうもん、であります。
     つまり、脇なら「強がりで寂しがり屋」だけでいいんです。あとはノイズになるので、基本的には書かない。書いてもいいんですが、それは主人公にとって必要なら、という程度です。
     「主人公だけに見せる顔」と「その他(または攻めだけ)に見せる顔」の二面でもオッケー。
  •   脇キャラはなるべくシンプルに作っておくのがコツです。そして、この方法を踏襲する場合、「脇は二面でよし」を逆手にとって、「脇だけど、メイン寄りの脇だから、三面まで出す」というやり方もあります。他の脇キャラは二面しかないけど、この脇キャラは三面描かれている、となると、読者さんからの印象が強くなり、目立つキャラクターになります。
  •  そして肝に銘じてほしいのは、脇キャラのために主人公を存在させてはいけない、ということ。
     主人公のために脇キャラが存在している状態で書くこと。
    です。実際の現実では、AさんのためにBさんが存在している、なんてことはありえませんが、小説の世界は、あくまで主人公を軸に形成された世界なので、神視点の群像劇でもない限り、脇はあくまで脇として描くことが肝要であります。
  •  まあ、引き算の美学ってものがありますから。脇キャラは、少ない情報で魅力的に書ける、というお得なポジションでもあるんですよね。
  •  いやはや、書いた書いた。
     どうですか? 皆さん、自分のキャラ、作れそうですか?
     キャラの葛藤が決まると、お話の流れも決まってくるということが、ちょっと分かっていただけたでしょうか?
  •  こういうお話の中で、こういうキャラを作るぞ、と決めてみると、更にお話の流れがはっきりと決まっていくので、そのやり方もお勧めします。
  •  例えば、「誰からも相手にされていない男子学生が、文化祭のミスコンで頑張る話」を書こう! と決めてから、キャラクターを先ほどの渡瀬雲母くんに設定した場合、雲母くんみたいなタイプがミスターに選ばれることに興味があるとは思えないから、他に目的や理由があったんだろう、とか、そういうふうに広げていけますよね。
     どうでしょう? 私の説明、足りてるっ?
  •  言いてえことはただ一つ。BL小説はキャラに始まってキャラに終わる!
     キャラのテーマが小説のテーマ。
     キャラさえ魅力的なら、文章が下手だろうと構成がぐちゃぐちゃだろうと、そんなもなァ些細なことでぇ! 兄貴、このキャラならいっちょ天下とれまっせぇ! ってことです。

書きたいなと思えるキャラクターこそ、命

  •  小説を書き始める前に、まずは自分が書いてみたいなと思えるキャラクターメイキングから始めてみましょう。私のように葛藤から決められそうなら是非やってみてほしいですが、それが無理ならガワ(見た目・名前・年齢・肩書きなど)から作っても構いません。
  •  そのあと、性格、人間関係、他者からの評価、自己評価、隠している本音(このあたりがいわゆる六面になります)を決めていきましょう。隠している本音を見ると、葛藤が割り出せることが多いので、一つずつ埋めていくつもりで取り組んでみてください。
  •  次回は、作ったキャラを使って、お話をどう構成するかを考えます。皆さんも、是非キャラを作って参加してください。そして私と一緒にプロット作りに取りかかってみましょう。
      ではではまた次回、プロット編でお会いしましょう!
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