小説書こうよ!BL小説の書き方
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我々最大の武器、推敲について話そうじゃないか

  •  こんにちは、樋口美沙緒です。『小説書こうよ!』もとうとう六回目を迎え、後半戦となりました。
     今回は推敲編……ということで、推敲について考えていくわけですが。
     ふう……。ちょっと今までにないくらい緊張してるんだぜ。なんでかというと、私これまでの回で散々、
      我々には推敲という武器がある!
     と、言いまくってしまったのですが、いざ推敲について書こうと思うと、意外と話せること少なくね!? ってことに気づいて、ちょっと焦っています。

そもそも推敲って、何をどこまで、どうすればいいの?

  •  うーん、そうなのよ。推敲ってさあ、とにかく何回も何回も自分の原稿を読み返して納得いくまで直してください、のこの一言に尽きる部分があってさあ。でもこの、「納得いくまで」というのがみそで、どの程度直せば納得できるかが人によって違うというのが、トラップの一つだなあと思っているんです。
  •  みなさんは小説を書きあげたあと、さあ頭から読み直して、加筆修正していきますよ、というとき、なにを手がかりにその作業を進めますか?
     案外、推敲の手がかりがよく分からないまま始めてしまうとか、結局正しく加筆修正できたかどうか分からないまま完成原稿としてしまうこと、ないでしょうか。
  •  現在の私は、推敲においてなにを手がかりにやっていくか、というのが大体分かっています。それは作品によって違うのですが、要するに「このお話で私はなにを書きたかったのか」という部分が自分の中である程度はっきりしているので、書きたかったことがちゃんと書けているのか、読者さんに伝わるのか、というのを軸に直せるからです。
  •  でも、投稿時代の私は違いました。
     自分の書きたいものがなにか、そもそも分からないまま書いて、直すときにも分からないまま直していました。だから推敲を終えても、ぼんやりとした不快感というか、「これじゃない」という感覚が残っていました。
  •  今の私が、当時の私にアドバイスするとしたら、その「これじゃない」感は正しいから、そこをしっかり見据えて、なにが違うのか、どうしたら作品が自分にしっくりくるのか、考えてみて! と伝えるでしょう。そして「これじゃない」感が解消されるまで、とことん一作に向き合ってみてほしい、そう言うと思います。
  •  実際私がデビューするまでと、デビューしてからの数年間、担当さんから課されたことの最重要課題はこの一点、「書きたいものを見極めて書く」だったと思います。
     なのでもし、直しても不快感が残っている、という方は、もう一度自分が書きたいことはなんだったのか、よーく向き合うことから始めてみてほしいと思います。
  •  そしてですね。私が最近憂えるべきことかなと思っている事象なのですが。
      自分の書きたいものがなにかよく分からずに書いているのに、「これじゃない」感を感じずに終わらせている方が、意外にも多いのではないか……そんな印象があります。
  •  BL小説をはじめとしたライトノベルやネット小説は、徹底的に推敲せずに書いても、読者さんに読んでもらえるし、喜んでももらえる、という幸せな現状にあるため、差し迫ってめちゃくちゃ直そう、と思わずとも、書き手が満足感を得られるというのが、原因の一つかなあと想像しています。(下手な邪推でありますが)
  •  でもね、私はこのコラムを、何度も言っておりますが、ずーっとプロでやりたい人向けに書いてます。十年、二十年と続けられる実力は、文章力、構成力、精神力に支えられてこそだと思っています。なかでも、特に大事なのが文章力かなと。
     なぜなら私が投稿時代、担当編集さんに言われたのだよ。
    「樋口さんは文章力がありません。もし、十年以上作家として生き残りたかったら、基礎的な文章力を身につけてください
     と! これも忘れられない言葉シリーズですね。
     当時はがーん! 私って文章力ないの!? 結構書けてると思ってたのに! と落ち込んでいましたが、今になって振り返ると、よくぞあのとき言ってくれた。おかげで命拾いしたわい、という気持ちです。
  •  ちなみにその担当さんのもとで本を出すことになったとき、私はなにをしたでしょうか。
  •  まず、書き散らした初稿を刷りだして(重要!)
      赤ペンを持ち(重要!)
     すべてを音読し(重要!)
     ちょっとでも喉にからまる部分は見直して文章を整え(重要!)
      退屈だなと感じる部分に印をつけてなぜ退屈か考え(重要!)
     必要とあらばエピソードを削り、あるいは新しく作り(重要!)
     感情的なシーンでの描写が足りているか考え(重要!)
     説明が分かりやすいか検討し(重要!)
     キャラクターの心情がぶれていないかをチェック(重要!)
  •  していきました。
  •  推敲ではこういうことをやってほしいなと思います。
     念押しになりますが、この作業をしながら何度でも何度でも振り返ってほしいのが、「なにを書きたくて書いているのか」ということです。
     そこがぼんやりしていると、小説全体が薄味になったり、ぼんやりしたり、キャラが立たなくなったりして、とにかくさらっとは読めるけど、なにが言いたいかは全然分からない小説、になってしまいがちです。それは非常にもったいないことだと思います。

担当編集との付き合い方

  •  ところで、書籍化を経験されている方や、これから経験するという方には、必ず編集さんが担当についてくれると思います。
     前回も書いたと思いますが、編集さんというのは「読みのプロ」です。
     私たちは(またしても勝手に仲間にしていくスタイル)書くプロにはなれるかもしれませんが、読むプロにはなかなかなれません。
     たまにどっちもプロ級の作家さんがいますが、そういう人はごく少数だと思います。
  •  もしかすると、小説を書かない人には、小説の書き方など分からない、と考える人もいるかもしれません。実際、編集さんのすべてが的確なアドバイスを言えるかというと、そうとも限りません。
     ですが、少なくとも「読むこと」においては、その作品の作者よりも冷静で、合理的で、読者さんの目線に近いところにいらっしゃいます
  •  なので編集さんのアドバイスは、ひとまずは、しっかり聞き入れてみましょう! 担当編集さんから直接赤ペンを入れてもらえる機会があったら、なぜそう直されたのか、その意図を細かく訊いてみるのもお勧めします。自分の文章の癖や、間違った思い込みなどに気づけたりするよいチャンスです。納得できなければ、納得いくまで話し合うのも大事です。作家と編集と言っても、人と人ですからまずはコミュニケーションかなと。
  •  もしアドバイスを活かそうとしてもどう書いたらいいのか分からないときは、分かりませんがどうすればいいですか? と相談すると、ちゃんと答えてくださいます。
     たとえはっきりとした答えが出なくても、一緒に悩んでくださる方が多いと思います。
     小説を書くのは孤独な作業ですが、担当編集さんは頼もしい味方です。おおいに頼って、推敲してください。
     (ただ、たまに、どうしても相性のよくない担当さんと出会うこともあるでしょう。これについては悩んでいる方もいるでしょうが、非常に難しい問題なので、いつか別枠でお話できたらお話しします。)
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